裁判の相手方が入院し、成年後見人が立てられた際の対応

裁判の途中で、相手方である被告が脳卒中で倒れて意識混濁となってしまった。

被告は弁護士を法廷代理人として委任していたので、現状意識が無くても、裁判を継続出来るはずであるが、被告代理人弁護士は、「被告との打ち合わせが困難であるため、後見人選任まで手続猶予をいただきたい。」として、被告に成年後見人が立てられるまで待って欲しいとの上申書を裁判所に提出した。

当初、被告代理人弁護士が成年後見人となるのであれば、話が早いと考えたのであるが、被告代理人弁護士は、被告に対して弁護士費用の債権を有している為、利益相反関係となり、成年後見人にはなれないとの事であった。

入院した病院においても、費用請求その他の手続きが滞る為、病院が自治体の福祉課に申請して、その自治体が家庭裁判所に成年後見人の申し立てを行なうという手順となった。

成年後見人が選定されるまで、時間的には、早くとも2~3ヶ月はかかるとの事である。

こちらとしては、被告の都合で裁判が長期化しては大きな不利益になるので、それとは関係なく進めて欲しいと希望したのであるが、弁護士の意見としては「 被告の防御権保障の観点から、手続猶予自体はやむを得ない。 」との事であった。

また、仮にこのまま進めることが出来て判決が得られた場合であっても、被告が控訴した場合、高裁で一審の審議が不十分であったと判断されてしまうリスクが残ってしまうとの事だった。

仕方なく長期戦を覚悟して、成年後見人の選任を待ったところ、半年間、事実上の審議が止まる事となった。

その間、2ヶ月毎に裁判所の期日は開かれるので、弁護士が対応したが、電話会議システムでの出席である為、弁護士の日当としては半額としていただいた。

その後、成年後見人には、地域の弁護士が選任され、実質的な審議が再開されたが、被告サイドは、それまでの争点を継続して争うのではなく、和解を提案して来た。

こちらは、あくまで判決を得たいという態度で臨んでいたので、和解をお断りしたところ、次の期日で被告代理人弁護士が準備書面により、「○月○日付答弁書の第1請求の趣旨に対する答弁における主張を撤回し、原告の請求をいずれも認める。」との事で、認諾の意思表示をして来た。

元々、被告本人は、原告側の主張を一切認めず、無理筋とも思われる虚偽の事実を主張して徹底抗戦していたのであるが、本人が倒れて、弁護士が成年後見人に就く事により、冷静な判断がされたものと思われる。

振り返れば、当初の段階で、委任を受けた代理人弁護士が、被告への適切な説明により、早期に認諾してしまうなど、上手いリードをして貰えれば、長期的な裁判にならず、お互いの時間も費用も節約できたはずであるから残念である。しかし、強烈な個性を持つ被告の意思で争う構えとったのであるから、誰が説得しても無理だったのだろう。

ここで、区分所有建物の裁判の場合、管理規約に記載があれば、原告となった管理組合側の弁護士費用等の一切を被告に請求できるものとされているので、被告の損害が甚大になってしまうのである。気の毒であるが仕方がない。

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