マンション管理会社をリプレイスする際、大規模修繕工事を発注する業者を選定する際など、数社を競わせて、組合員の前でプレゼンテーション会を行う必要が生じる。
その際の注意点として、質疑応答に関しては、各業者の説明担当が仕切るのではなく、理事長が仕切り役となって進行する事が望ましい。
理由としては、組合員が勝手な発言で、業者と直接交渉を行なう事を避ける為である。
あるマンションでは、屋上の集合アンテナの配線形式が古いものである為、衛星アンテナを追加設置して、混合して配信する事が出来ない為、各戸のバルコニーに衛星放送用のアンテナを設置する事を許可していた。
大規模修繕工事においては、外壁等塗装の為、これらのアンテナを一旦取り外して足場の外に仮設的に移動し、完了後に元へ戻す事が必要だった。
この作業は、塗装をする職人では出来ないので、工事業者が別途電気工事屋を手配して作業を行う事になるので、それだけでも100万円を超えるものと見込まれる。
プレゼン会において、最初にプレゼンを行った業者の質疑応答段階になり、衛星放送用アンテナをバルコニーに設置している区分所有者が発言し、この作業について、業者が無償で行なうよう、交渉を始めたのである。
業者としては、億越えとなる大規模修繕工事を何としても受注したいが為、ほぼ即答で、これを承諾した。
しかし、議長としてはこれを看過できない為、一旦それを保留とし、1社目のプレゼンが終了した段階で、時間を割いて組合員に事情説明を行なった。
全戸のうち約10%程度が設置しているバルコニーの衛星放送用アンテナは、管理組合で管理するものでは無く、各個人が自己責任で管理するものであるから、工事に伴う移設作業は各自の負担で行なって貰わなければならない。
それを業者に無償でやらせるという事は、一見お金が動いていないようであるが、実はその分の費用を業者が値引きしている事と同じである。
管理組合としては、最終的な工事の発注時に価格交渉を行なうのであるから、この様な一部の区分所有者の為にだけ値引きが行なわれた状態は好ましくない。
仮にその為の電気工事業者の手配費用が100万円であるならば、全体の工事費から100万円を値引きしてもらい、管理組合としての支出を抑え、移設費用の100万円は、アンテナを設置している区分所有者間で按分して別途負担して貰うべきものである。
各区分所有者が自分の利益の為に会議で意見を表明するのは自由であるが、管理組合が工事を発注する可能性のある相手との間で、勝手な交渉をされて、話が決まってしまった場合、後で「全体の利益を損ねた。」事が問題となり、理事会側が責任を追及される事になりかねない。
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