新ロイヤルホテル四万十に宿泊 <思い立って四国お遍路八十八ヶ所>⑱

この日も走り回って何とか予定の件数をこなす事が出来た。朝のスタートを早くすれば、もう少し余裕を持って参拝する事が出来るのであるが、それが中々難しい。この調子で行くと最終日までギリギリの日程で走り続けなければならない感じである。
この日の宿は、「新ロイヤルホテル四万十」という四万十市内にあるホテルである。37番「岩本寺」からは約50kmの距離がある。明るいうちに到着したいと思い、参拝を終えて直ぐ様向かう事にした。四万十市内は道が入り組んでいてナビが無いと旅行者には走りにくい街である。ホテルの正面玄関は商店街の通りにあるので、そこで一旦駐車して、フロントで駐車場の場所を聞くと建物の裏手にあるとの事。そのブロックを一周して裏手の駐車場に車を入れる。参拝を終えてそのまま走って来たので我々はお遍路姿のままであるが、このホテルの宿泊客は四万十の観光客が中心の様なので若干浮いている感じがした。それでも気にせずチェックイン手続きを終えスーツケースを引いて部屋に到着すると、やれやれという思いでベッドに倒れ込んだ。先ずは着替えて珈琲を飲んだが、折角なので日が暮れないうちに四万十川に架かる「沈下橋」を見に行こうという事になった。Googleで調べるとホテルから北へ数キロ走ると「佐田沈下橋」というものがあるようだ。今すぐに出れば未だ日没前に着けそうである。早速駐車場に下りて車に乗り込み沈下橋へ向かった。ホテル周辺は商店街的な街並みであったが、少し走ると風景はガラリと変わり、樹々の緑にむせかえるような深い自然に包まれる。このまま走ると原始の世界に踏み込んで行くのでは無いかと感じる程である。人が住んでいない場所は、太古の時代から変わらずこの様な風景だったのだろうか。南国の気候は人工的な物を自然に返す力が強いのだろうと、そのパワーに圧倒される思いがした。10分位走ると佐田沈下橋に到着した。他には車もなく、人もいないので、先ずは車で渡ってみた。沈下橋とは橋の欄干が無いのっぺらな橋で踏み外すと簡単に川に落ちてしまう。四万十川は水量が多く、水かさが増した時に欄干があると水の流れの圧力で橋ごと流されてしまう危険がある為、抵抗になる欄干を最初から設置しないのだそうだ。橋桁を高くしない事により工事費が安く済むこともあるのだろう。発想としては他の地域では受け入れられなさそうな物なので、ここ以外には広まらないだろう。その意味で良い観光資源となっている。沈下橋を渡った対岸で車を止めて下りてみると、向こうから1台の車がやって来て我々と同じ様に駐車すると中からミリタリーウェアの若者5人が出て来た。何か怪しげな感じで、ここでサバイバルゲームでも始めるのかと思って、尋ねてみると単に観光で来ただけですとの事であった。そうは言っても異様な雰囲気である。彼らも記念写真など撮っていたが、我々も暗くなる前にと思い、沈下橋の真ん中まで歩いて行って記念撮影した。川面を覗くと深いアオ色で水量も多い。吸い込まれて落ちるとあっという間に流されて藻屑となってしまいそうである。夕方以降にここへ来ると辺りには街灯もないので何かあると危険である。人間は自然の中では何と小さいものかと思わされる。沈下橋で暫く写真を撮ったりしていると橋の向こうからクロネコヤマトのトラックが走って来た。すっかり観光用の物という気分でいたが、普段の生活にも使われているんだと気付かされる瞬間であった。そうこうしているうちに暗くなって来たので車に戻って退散する事にした。帰り道は四万十川沿いのルートを走ってみたが、この道も大自然が感じられてアドベンチャーである。四万十川は、佐田沈下橋よりさらに上流に行くとカヌーやラフティングを楽しむことができるらしい。沈下橋も支流を含めて47あるそうだ。アウトドア好きには絶好の旅の目的地になりそうである。
夕飯はホテル内のレストランで摂れば楽で良いのだが、翌朝もそこで食べることになるので、外に出かけてみる事にした。日中車で走っている時に後部座席にロープを張って洗濯物を乾かしたいので、先ずは100均に寄ってロープと洗濯バサミを購入した。レストランは四万十市内に入ってくるときに数件見かけたので、その中の大きそうな1軒で「いちもん屋」というお店に入ってみた。ローカルなファミレスと言う感じであったが賑わっていた。宿に戻ると我々の他にお遍路のご夫婦を一組見かけた。家族連れが中心ではあるが、中にはランニングウェアの夫婦がいたり、ここを拠点にスポーツを楽しむ人もいるようである。翌朝は足摺岬の先端まで約50kmのドライブからスタートするので、本来は早朝に出発した方が良いのであるが、いつもお昼ご飯が車中になってしまい、コンビニのサンドウィッチとお握りをほおばりながら運転しているので、朝食はしっかり食べておきたいと思い、ホテルのビュッフェをいただいてから出発する事にした。今日まで4日間、ランチで時間を取られるのがもったいないので、毎日運転しながらの食事となってしまっている。朝と夜だけが落ち着いて食事が出来る環境なのである。

続きはこちら「38番札所・金剛福寺~」

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