何かトラブルがあり、刑事事件として相手方を告訴したい場合、弁護士に依頼すると結構な経費が掛かります。
自分で告訴状を書いて警察に提出するのであれば、費用は掛かりませんので、この制度を利用しない手はありません。
しかし、基本的に警察は告訴を受けたがらないので、事実と証拠を用意して、しっかりした告訴状を書かなければ受理して貰えません。
この告訴状サンプルは、所有する建物の塀に車をぶつけられて壊され、損害賠償の交渉を保険会社と行なっている際に、相手方の態度が悪かった事、保険会社が満額出さない様なニュアンスが感じ取られたので、告訴に踏み切ったものです。
結果として、保険会社が全額賠償に応じたので、告訴は取下げました。
相手方からは修繕工事費が満額支払われ、自分の掛けている火災保険から見舞金が下りましたので、トータルではプラスになりました。
以下、サンプル(ひな型)として他の事案にも応用可能かと思います。
令和 年 月 日
告訴状
○○警察署長殿
告訴人
住所 〒○○○-○○○○
東京都中央区○○○○
電話番号 ○○○-○○○○-○○○○
氏名 株式会社○○○○
代表取締役 ○○ ○○
被告訴人
住所 〒○○○-○○○○
東京都○○区○○○○
電話番号 ○○○-○○○○-○○○○
氏名 ○○ ○○
告訴の趣旨
被告訴人の以下の行為は、運転過失建造物損壊罪(道路交通法116条)、警察への通報義務違反(道路交通法第72条)に該当するので、被告訴人を厳罰に処することを求め、ここに告訴いたします。
告訴事実
告訴人は、株式会社○○○○(以下「○○○○」という。)の代表取締役です。 ○○○○は、別紙物件目録記載の被害建物(以下「本件建物」という。)の所有者です。
被告訴人は、ご本人によると個人経営のレストラン○○○○のアルバイト従業員との事ですが、事件当日は訴外○○○○氏が経営する○○○○所在の「レストラン○○○○」のアルバイト従業員として勤務していたとの事です。
被告訴人は、令和○年○月○日午後○時頃に別紙物件目録記載のレストラン○○○○無料駐車場(以下「本件駐車場」という。)に駐車されていた訴外○○○○氏所有の自動車(○○330 ○ ○○-○○)を運転して本件駐車場から出庫する際、アクセルとブレーキを踏み間違えて暴走させ、本件建物の境界塀に激突して境界塀等を損壊させました(損害見積額約○,○○○,○○○円相当、工事見積書別添)。境界塀等の損壊状況は添付資料の写真の通りです。
過失建造物損壊罪について、道路交通法116条は、車両等の運転者が業務上必要な注意を怠り、又は重大な過失により他人の建造物を損壊したときは、6月以下の禁錮又は10万円以下の罰金に処すると規定しています。
ここで、過失建造物損壊罪にいう運転者とは、道路交通法2条1項18号に「当該車両等の運転をする者」とされている運転者のことであり、必ずしも現実にその車両等を運転している状態にある者ばかりでなく、その車両等を運転していた者が、一時その運転を止め、更にその車両等を運転することとなる者も含まれているものと解されています(「執務資料道路交通法解説」(道路交通執務研究会編著。15-2訂版。平成22年。東京法令出版)1236頁)。
そうすると、道路上を運転進行中でなくても、駐停車中の車両等が運転者の過失により暴走したり、炎上したりして、建造物を損壊したときには、過失建造物損壊罪の成立を認めてよいと過去の裁判にて判事されております。
従いまして、道路における車両等の交通に直接起因する事故でなくても、過失建造物損壊罪は成立します。
本件駐車場は、私有地ですが、最高裁の昭和44年7月11日判決にて、以下下線部分の判決理由に示されている通り、道路交通法上の道路であると解されます。
道路交通法は、二条一号で「道路」の定義として、道路法に規定する道路等のほか、「一般交通の用に供するその他の場所」を掲げており、たとえ、私有地であっても、不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所は、同法上の道路であると解すべきであるから、右部分は、同法上の道路であったと認めるべきである。」 (別紙判例をご参照下さい。)
※不特定の人や車が自由に通行できる状態になっていた事は、別紙「レストラン○○○○無料駐車場の利用状況」の各写真にて示されている通り、毎日レストラン○○○○を訪れる別々の車が駐車している事で証明されております。また、本件駐車場の敷地である「○○○番○」の土地と、その南側の私道( ○○○番○ )との間には、大部分に於いて塀などは無く境界が曖昧です。また同敷地内のプレハブ小屋は空き家であり長年利用されている形跡はありません。その為、西側の区道○○号線と本件駐車場を挟んで東側に並行して存在する緑道を行き来する一般通行人が上記通路だけでなく本件駐車場敷地内を日常的に通行しています。
従って、本来であれば被告訴人は、直ちに車両の運転を停止して道路における危険を防止する等の必要な措置を講じたうえ、直ちに最寄りの警察署の警察官に事故に関する報告をしなければなりませんでした。しかし、被告訴人は、警察官に連絡することなく、また当該被害建物を訪れて事故発生を知らせる事も無く、そのまま車両を運転して現場から立ち去りました。
この行為は道路交通法第72条に違反しております。
その後においても、被告訴人及びその保険会社から、警察官による事故現場での状況確認の依頼がなされる事はなく、告訴人の側から○○警察署に連絡を行ない、被告訴人の保険会社を通じて被告訴人に立ち合い現場に出頭するよう通知しました。事故後の経過は次の通りです。
当日、被告訴人は何の通知をする事も無く、翌日になって告訴人宛てに保険会社から連絡が入りました。
○/○(○曜日)
○○:○○ 被告訴人を担当する保険代理店より○○保険株式会社○○保険金サービス課に事故の第一報が入りました。
○○:○○ 頃 被告訴人の雇用主である訴外○○○○氏が自動車保険契約をしている○○保険株式会社○○保険金サービス課の○○氏から当社に連絡が入り事務員Aが受けました。
その際の、上記両名の会話は次の通りです。
(○○保険の○○氏)業者を選定した後、現地調査に行きたい。
(事務員A)調査日が決まったら、事前に連絡するようにお願いした。
※上記両名どちらも警察官への報告等について言及は無かったとの事です。
○○:○○ 告訴人から○○警察署に連絡し、被害届を提出したいので現場を見て欲しいと依頼。
○○:○○ ○○警察署より○○氏が到着し、事務室で防犯カメラ等の確認を行なった上、現場を確認。
○○:○○ 頃 訴外唐鎌氏から管理室宛てに電話連絡。
○○:○○ 訴外○○氏から告訴人の携帯に電話連絡。
○/○(○曜日) ○○:○○ ~ ○○:○○ ○○警察署○○氏による現場の再調査、出席者(被告訴人○○氏、訴外○○氏、告訴人○○)
※この現場立会において、被告訴人から、告訴人に対して謝罪の言葉が一言のみありましたが、被告訴人の雇用主である訴外○○氏からは、告訴人に対する謝罪は、一言も無かっただけでなく、被告訴人が警察官への報告をせずに現場を立ち去ったにもかかわらず、「保険会社から連絡をしたのだから義務は果たしている。」と抗議の言葉を何度も浴びせられました。
また、終始、被害者である告訴人に対して謝罪をする態度が一切見られなかった事は、極めて遺憾です。
※この現場立会時の被告訴人の説明によれば、被告訴人は別図①の位置に前向きに駐車していた車両を運転して出庫する際、一旦、②の位置に車両の尻を振り、その後③の位置と②の位置の間で、何度かハンドルの切り返しを行なったとの事です。
その際にアクセルとブレーキを踏み間違えて、バックで暴走し、本件建物の境界塀に激突して、それを損壊させたものです。
このブレーキを踏もうとした段階は、ギアはバックに入っており、車両は一定速度で後退している途中であり、何らかの衝撃、もしくは切り返しの位置まで来たためにブレーキを強く踏もうとしたものと解せられます。
被告訴人は、業務として前記車両を運転していた運転者ですが、前記駐車位置から出庫して発進するに当たり、自車の後方には本件建物があるのであるから、シフトレバー・アクセル・ブレーキを的確に操作して、安全を確認してから慎重に出庫すべき業務上の注意義務があるのに、漫然とこれを怠り、ペダルを的確に操作せず、ブレーキペダルを踏むべきところ、アクセルペダルを踏んで後退暴走した過失により、自車を本件建物境界塀に衝突させ、よって、○○○○が所有する本件建物境界塀を凹損し、もって業務上必要な注意を怠り他人の建造物を損壊したものです。
このように、被告訴人が業務上必要な注意を怠り他人の建造物を損壊し、尚且つ警察官への報告義務を怠ったものですので、被告訴人には運転過失建造物損壊罪(道路交通法116条)、警察への通報義務違反(道路交通法第72条)が成立します。
そこで、被告訴人に対しては、運転過失建造物損壊罪(道路交通法116条)、警察への通報義務違反(道路交通法第72条)により、厳重なる処罰を求め、ここに告訴いたします。
以 上
証拠方法
1.境界ブロック及びフェンス原状回復工事見積書
2.被害建物境界ブロック修復前写真
3.レストラン○○○○無料駐車場配置図
4.レストラン○○○○無料駐車場利用状況写真
5.事故車両の写真
6. 最高裁の昭和44年7月11日の判例
「被害建物」の物件目録
所 在 東京都中央区○○ ○丁目○番地○
構 造 鉄筋コンクリート造陸屋根3階建
床 面 積 1階 ○○.○○㎡
2階 ○○.○○ ㎡
3階 ○○.○○ ㎡
「レストラン○○○○無料駐車場」の物件目録
所在地番 東京都中央区○○ ○丁目○番地○
地目 宅地
地籍 ○○○.○○ ㎡
所有者 東京都○○ ○○ ○丁目○番地1 ○ ○○ (登記簿記載)
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