翌朝、妻がまた部屋で朝食を食べたいというのでセブンイレブンに買いに行く。
当然ながら、品揃えは日本と違う。サラダとサンドイッチのほか、空芯菜をレンジで温めて食べるパックがあったので買ってみた。日本と同じ様に、店内のレンジで温めて貰って持ち帰る。
部屋にはナイフ・フォークとお皿があったので、そこに盛って食べたが、これがなかなかイケた。
この日は、妻のモール巡りに1日付き合う予定である。
先ずは、チムサーチョイの駅まで地下道を通って行き、もう一度アイスクエアをザッと見る。
その後、地上を歩いてペニンシュラホテルに向かった。
賑やかなチムサーチョイ駅周辺とは違い、この一角は独特なハイソな雰囲気がある。
建物の周囲をくるっと回って、正面エントランスから入ってみる。
玄関前には、3台のロールスロイスが駐車している。やはり、客層が違う。
場違いな感じに気後れしながらもロビーに入る。
ロビーにもラウンジにも客は少ない。
重厚な雰囲気にうっとりしながらもロビーの広い空間にいると居心地が良く無いので、階段で2階のアーケードフロアに上がった。
ハイブランドが軒を連ねているが、店が小さいので冷やかしで入るのは躊躇われる。グル~ッとウインドウショッピングをした。セレブのお得意様向けのお店ばかりで、観光客はお呼びでない様だ。
広東料理のスプリングムーンへは一度行くつもりだったが、ランチには少し時間が早いので、入口だけチェックした。重厚な雰囲気である。ここは一度は行ってみないと、と思わせる。
折角ペニンシュラに来たのだからと、この日は1階のラウンジでお茶だけすることにした。
その昔、妻が学生時代に来た時も同じ様に記念にお茶だけして帰ったそうである。
香港の友人は、若い頃に経験のためにとペニンシュラに宿泊したそうであるが、「ディサポインテッド」との事である。やはり、古さが致命的だった様だ。しかし、2013年に大規模なリノベーションを行なったとの事なので泊まってみたい気はする。
ペニンシュラの隣にはYMCAのビルがある。建物は古そうだ。こんな良い立地にこれが建っているのが勿体無い気がする。何処かと組んで建て替えれば良いのにと言う感じである。
その隣が1881ヘリテージである。
1881年に建てられた水上警察本部の建物を改修してホテルとショッピングモールとしてオープンさせたものだそうである。
歴史ある建物は写真映えがする。当時の時計塔が残されていて撮影スポットとしては最高である。
いくつか入っているレストランも昔の建物の雰囲気を上手く生かしてオシャレな内装に仕上がっているので、立ち寄りたかったが、まだ中途半端な時間なので見るだけにした。
この日の目的は、香港最大のモールと言われる「ハーバーシティ」の散策である。
5つのエリアで構成され、平面的に広いので、全て回るのは困難だ。
妻は先ずバレンシアガを見たいそうなので、インフォメーションで場所を聞く。丁寧に教えてくれたのだが、辿りつけないので、別のインフォメーションでまた聞いて、やっとのことで到着した。
どこのモールも入っているテナントは重複しているが、バレンシアガに関しては、ここが直営店なのだそうである。
価格に関しては、ハワイでも日本でも左程違いは無かった。
モールで買い物をした後、「飲茶に行こう」となった。
フェリーで到着した中港城ビルに入っている「コンフーディムサム」は一流ホテルのシェフが独立した店という事なので、候補のひとつであった。
ハーバーシティの隣なので丁度良い。
お昼時の1時を過ぎていたので、少し待たされただけで入ることが出来た。
先ずはプーアール茶を注文する。綺麗そうな店なので、我々は香港式にお茶でお皿を洗うという儀式はしなかったのであるが、後から入って来る地元の人達は皆それをやっていた。
妻はそれを見ただけで、「しまった~。お腹壊したらどうしよう」と不安になっていた。
やはり、香港では、それはやるべき儀式なのだろう。
ただ幸いにも、お腹の調子は悪くはならずに済んだ。
注文は、テーブルに備え付けの紙に書かれた品物の番号の欄に数量を記入して店員に渡す方式である。
ワゴンに点心を載せて店員がフロアを回る方式の店は、今や殆ど無いらしい。
日本語メニューが無い店なので、お隣の熟年夫婦が食べているのを見て、それは何ですか尋ねると、これは何番で他にオススメはこれだと奥様が親切に教えてくれた。
地元の人達は、パッと注文して、パッと食べて直ぐに帰って行く。
我々はお茶を飲みながら、ゆっくりといただいた。
お茶のポットの蓋をずらして置くとお湯を足して欲しいと言うサインとなり、店員がそれを見つけると直ぐにお湯を入れてくれるのが飲茶の流儀との事である。
実際やってみると、その通りのオペレーションで、いちいち店員を呼ばなくて良いので楽である。会話に夢中になる奥様グループには良いシステムなのだろう。
かなり長居したので、脚の疲れは取れた。
ホテルに荷物を置きに一旦帰るつもりであったが、時間が勿体無いので、そこから直接モンコック(旺角)に向かう事にした。
地下鉄に乗らなければならないが、チムサーチョイ駅には戻らず、1つ先のジョルダン(佐敦)駅まで歩いてみた。
九龍公園の周囲を回って北側の道路に出ると、その辺りは昔の香港の面影を残しており、看板が建物の壁から道路の上を塞ぐ様に両側から真横に突き出ている。まさに「ザ・香港」という景色である。
この通りには、街場の不動産屋が軒を連ねており、日本と同じく表のガラスに物件情報が貼られている。
ただし価格は、4億の戸建とか、マンションでも億超えというのには驚かされた。東京であれば都心の一等地の価格である。
こんなイケてない感じの街場の不動産屋が扱うタイプのものでは無い。
中国本土からやって来るお金持ちの人達が、タマタマ通りかかって買ってくれれば商売が成り立つのかもしれない。もしくは今や不動産探しもネットの時代だから店舗の立地は重要ではないのか?
その他、この辺りには穴場的なアパレル店があり、価格は超お買い得であった。
ネイザンロードに出て左手に折れるとジョルダンの駅がある。
モンコックまでは地下鉄で2駅であるが、この辺りは「ザ・香港」の景色が楽しめるので地下に潜るのは勿体無い。
バスに乗ってみる事にした。
バス停がいくつかあって列が出来ているが、行き先を確かめるために停留所の表示を見ていると、通りかかった親切なご婦人が、どちらへ行きたいのかと尋ねてくれた。
モンコックに行きたい旨を伝えると、どのバスに乗っても止まるし、歩いても行けるとの事。
この日は流石に2駅は歩けないので、次に到着したバスに乗った。
2階建てバスなので、上に上がると景色が良くて観光客には最高である。
モンコックという名前のバス停があると思っていたが、違う表現だったので、1つ行き過ぎてしまった。
街区で2ブロック位なので、ブラブラと街を見ながら戻る。
途中ネイザンロードの1本裏手の道には、インテリア材料専門店が軒を連ねる商店街がある。
素人が買いに来るとは思えないプロ仕様の店ばかりである。
それとも香港の人達はDIY好きで、ここに一般の人が買いに来るのだろうか?
モンコック駅まで来て、アーガイルストリートを渡ると、ランガムプレイスがある。
非常に個性的な超近代的外観の建物で、周辺の環境からすると超唐突である。香港のデベロッパーは、力技するな~と驚愕させられる。
建物の中の構造も凝っている。無駄な共用部分を贅沢に作り、非日常的な空間を演出している。
賃料相場と投資利回りを通常通り計算していては出来ない開発である。
付加価値の部分を正確に見積もる眼力を持っているのだろう。
ここに若い人達が集まるようになった事で、旺角の賃料相場が上がり、一番恩恵を受けたのは周辺のビルオーナー達だろう。
目端の利く香港の投資家は、このビルの開発の話をキャッチした段階で、周辺の不動産を買い漁り、ビルの完成後に不動産相場が上がったところで売り抜けたそうである。
館内を見て回り、喉が渇いたのと、歩き疲れたので、お茶する事にした。
若い人達で賑わっているので、スタバは席が空いていない。隣に日本茶のカフェがあるが、こちらも満席。そのお向かいに甘味のお店があって丁度席が空いたので入店出来た。
メニューを見ると、先日いただいたセサミとレッドビーンのスープがあるので、それを注文する。
ここのは少し味の違いはあったが、やはり甘さ控えめで、私の嗜好にはピッタリであった。
ランガムプレイスを出て、ネイザンロードを横切り、女人街に向かう。
この辺りはドラッグストアが多い。香港は同じ種類の店が集まる傾向があるのだろうか?
それとは別の話だが「周大福」と言う看板とその店舗は、香港市内そこら中で見かける。この辺りだけでも3件以上ある。
宝飾品のチェーン店で、金製品などを中国本土から来る人達向けに売るらしい。セブンイレブンの数くらい見かけるのであるが、中を覗くと結構賑わっていたりする。
中国の富を商売に取り込めるか、それが出来ないかは、事業の成績に大きな違いが出る。日本も含めてアジアの国々は中国との付き合い方をどうしていくかという戦略が非常に重要になる。
政治の舵取りも難しいだろう。
好き嫌いや、善悪を置いても隣人として関わらざるを得ない。相手を研究する事が重要だ。
個人に於いても今後否応なく中国との接点を持つ様になることは頭の中に入れておかなければならないと思った。
中国パワー正に恐るべしである。
女人街は、道を塞ぐ様に露店が連なり、布生地だけでなく、洋服、小物、クオリティの低いコピー商品などを売っている。
インド人家族が何か商品を見定めて値切り交渉していたが、価格交渉が折り合わなかったようで、話を切り上げて歩き出した。すると、店員の女性が後ろから「50ドルOK~!」と必死に呼びかけて引き戻そうとする。
ガイドブックにも書いてある典型的な値切り交渉法であった。
インド人家族は、そこで店に戻るかな?と思って様子を見ていたが、この時は彼等は店に戻らず、そのまま女性を無視して歩き去ってしまった。
店員の女性の悲しそうな顔が印象に残った。実際どの店も殆ど売れている様子はない。置いているものが、あまりにも魅力が無いからである。
ダメさ加減が逆に面白くて買いたくなるものもあるが、ここの商品は、その手の面白味も感じない。
この雰囲気が香港名物というだけで、観光客が集まる場所なのだろう。
その後、裏路地を巡ってモンコックの駅に戻り、帰路は地下鉄でチムサーチョイまで戻った。
この日も傘が手放せない鬱陶しい天気だったので疲労が溜まる。こんな時、駅からホテルまでが地下道なので助かる。
部屋に荷物を置いて、足裏マッサージに行くつもりだったが、落ち着いたらお腹が空いたので先に夕飯に行く事にした。
妻が珍しく昨日の店でいいと言うので、2日連続してGOCHISOに行く事になった。この日は更に混んでいてテーブルの空きがないので、カウンターに横並びとなった。
客層は20~30代が多いように見える。それほど安い店では無いのに香港の若者達は外食にお金を使うな~と感心する。平均所得が高くて消費意欲が旺盛の様だ。かつての日本のバブル時代の空気に近いのかもしれない。
国の勢いとして今の日本は完全に負けている。しかし、インフラなど充実したストックを持っている部分では日本は幸せであると思う。若い人達にとってはどちらが良いか分からないが、我々オヤジ世代としては、日本で生きることの方が幸せなのかもしれない。
食事を終えて、時間も遅くなってしまったのでマッサージは取りやめて、シャワーを浴びて寝る事にする。
次の日、サーフポイントに行ってみようかと考えていたが、天気予報の波浪情報をチェックしたところ、波は無さそうである。
どんなところなのかポイントを見に行くだけでも私としては良いのだが、妻のモール巡りの方が重要という事で、それに付き合う事になった。
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